狼と白頭巾ちゃん
第14章 無意識の誘惑
獣の本能を呼び覚まされ理性を手放したシンは、
その欲望の示すがままに、匂いを辿り、花園へと足を踏み入れた。
彼の視界の先には、蹲る少女がいて、
咲き揃うどの花達よりも、甘い甘い蜜の香りを放っている。
シンが強く大地を蹴った。
すると次の瞬間には、
彼は音もなく少女の背後へと立っていた。
驚いて振り向く少女の瞳は濡れ、頬は紅潮し、身体は汗でしっとりと濡れている。
近づくほどに誘惑の蜜の香りはいや増し、
それはシンの欲望をより刺激して、
下腹部へドクドクと熱を集めた。
「あ…、あ……」
少女が声を発した。
理性が、
その少女はライラだと叫ぶ。
しかし、今や欲望の化身と化していたシンには、
その叫びは囁きほどにも聞こえない。
シンの目の中で、少女が怯えながら後ずさっている。
先ほどより大きく、理性が叫ぶ。
ライラだ!この子はライラだ‼
シンの目に理性の灯火が宿り、
彼は、欲望に抗うように声を発した。
「……ラ、イ……ラ……」
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「⁈‼」
ライラは驚き、目を見開いた。
突如、音もなく現れた獣。
全身の至るところを黒い体毛に覆われ、荒い息を吐く。
顔こそ影になっていて見えないが、両手には鋭い爪がギラリと光り、
男根は怒張して、大きく反り返っていた。
「あ…、あ……」
ライラの背に、ぞわりとした悪寒が流れ、
次いで恐怖が全身を襲い、言葉にならない声が漏れた。
獣は、今にも自分に覆い被さってくるかのように思われ、
逃げたいのに、足が動かない。
獣から目を離すことも出来ないまま、
ライラは腕の力だけでジリジリと後ずさった。
その時、
「……ラ、イ……ラ……」
動かぬままの獣から、聞き覚えのある声がした。