狼と白頭巾ちゃん
第14章 無意識の誘惑
「あなたは、シン…、なの……?」
呼びかけながら、
彼女は獣に向かって、手を伸ばした。
震える手で、そろそろと…。
「っダメだ‼‼‼」
獣の大きな怒声で、ライラの身体はびくりと跳ね、固まった。
「ダ…メ、だ。来る、な……、ライラ‼」
獣が苦しそうに声を絞り出す。
しかしその声で、ライラは獣がシンであると確信した。
「っやっぱり!シンなのね⁈‼」
その声に、獣の身体がぴくりと反応した。
そして、首を降りながらジリジリと数歩後ずさると、
くるりと身を翻し、次に空高く跳ね、
そのまま森の中へと、姿を隠した…。
………辺りに静寂が訪れ…、
極度の緊張から解放されたライラは、
ふっ…と肩の力が抜けるのを感じた後、
その意識を手放した。