
sex? or die?
第1章 Sector1 Night and Night 1
闇を引き裂く。そう、鋭利な切り裂くのではなく「引き裂く」だ。
時速180km/h。現実的なこのマシンの最高巡航速度。
当時は効果的と評価された、高速時の風の抵抗を減らすためのウィンドシールドだが、
風洞実験から生まれた今どきにマシンが、華麗に風の中を泳ぐのとは異なり、
あまりに不格好に、秒速50メートルでぶっ飛んでくる湿気を含んだ夜の空気を、
切り裂くというほど鋭利な風のかき分け方にはほど遠い。
闇を含んだハイウエイの上を空冷4気筒の排気音と共に、なまくらだがひたすら前に進む意思を持った銀色のオートバイが一台、
720kmという厚い空気の壁を少しずつ引き裂いていく。
カミソリのように一本性で綺麗に切り裂くのでなく、ふたつに分かれた空気のエッジは、
俺と俺のオートバイの振動によってギザギザに引き裂かれ、あっという間に景色の後ろに飛んでいく。
俺がこのオートバイをついさっきスタートさせたときのイメージがそれだ。
身に纏うセパレート式の革ジャンバーは時速と同じだけのスピードを持った風に叩かれ、
台風のときに外を歩き時に体験する風のさらに数十倍の威力でもってブチ叩かれ、
俺の体に沿って空力的に流れ左右の流れが合流するあたりで恐ろしい早さでぶつかり合い、
新たな気流をつくり、
僅かな真空の世界を俺の背中のあたりにつくり、
吹き飛んでいく。
前から叩かれ、後ろから引っ張られ、
体の表面はその尋常じゃない気流によって激しいバイブレートに晒される。
闇を引き裂くのは俺のカラダだけじゃない。
冷却を風の力に頼るためにエンジンに刻まれた冷却フィンが、エンジンの叫び声によりいっそう凶暴なエフェクトをかけ、
音ばかりでなく微小な振動を増幅し、その振動はエンジンパワーに若干負けているスチール製のパイプフレームを伝わり
車体全体に共振する。
フロントサスペンションは純正から倒立型へ、
リアの二本サスペンションもオーリンズに交換しているが、
路面の轍にそってビリビリと上下動する動きのすべてを吸収できるわけではない。
風と、エンジンと、路面のすべてのバイブレーションが混然一体となり、
そこにライダーの意思と、前へ進むためのパワーが厚い空気の層を引き裂きながら、進む。
時速180km/h。現実的なこのマシンの最高巡航速度。
当時は効果的と評価された、高速時の風の抵抗を減らすためのウィンドシールドだが、
風洞実験から生まれた今どきにマシンが、華麗に風の中を泳ぐのとは異なり、
あまりに不格好に、秒速50メートルでぶっ飛んでくる湿気を含んだ夜の空気を、
切り裂くというほど鋭利な風のかき分け方にはほど遠い。
闇を含んだハイウエイの上を空冷4気筒の排気音と共に、なまくらだがひたすら前に進む意思を持った銀色のオートバイが一台、
720kmという厚い空気の壁を少しずつ引き裂いていく。
カミソリのように一本性で綺麗に切り裂くのでなく、ふたつに分かれた空気のエッジは、
俺と俺のオートバイの振動によってギザギザに引き裂かれ、あっという間に景色の後ろに飛んでいく。
俺がこのオートバイをついさっきスタートさせたときのイメージがそれだ。
身に纏うセパレート式の革ジャンバーは時速と同じだけのスピードを持った風に叩かれ、
台風のときに外を歩き時に体験する風のさらに数十倍の威力でもってブチ叩かれ、
俺の体に沿って空力的に流れ左右の流れが合流するあたりで恐ろしい早さでぶつかり合い、
新たな気流をつくり、
僅かな真空の世界を俺の背中のあたりにつくり、
吹き飛んでいく。
前から叩かれ、後ろから引っ張られ、
体の表面はその尋常じゃない気流によって激しいバイブレートに晒される。
闇を引き裂くのは俺のカラダだけじゃない。
冷却を風の力に頼るためにエンジンに刻まれた冷却フィンが、エンジンの叫び声によりいっそう凶暴なエフェクトをかけ、
音ばかりでなく微小な振動を増幅し、その振動はエンジンパワーに若干負けているスチール製のパイプフレームを伝わり
車体全体に共振する。
フロントサスペンションは純正から倒立型へ、
リアの二本サスペンションもオーリンズに交換しているが、
路面の轍にそってビリビリと上下動する動きのすべてを吸収できるわけではない。
風と、エンジンと、路面のすべてのバイブレーションが混然一体となり、
そこにライダーの意思と、前へ進むためのパワーが厚い空気の層を引き裂きながら、進む。
