
sex? or die?
第1章 Sector1 Night and Night 1
それは客観的に見たときの視線。俺の視線はひたすら前方へ。
闇に溶ける曖昧な色彩のアスファルトが、地平線に伸びる先の、
ぼんやりとした闇空との境界に向けられ、
その視界の95%は恐怖を感じるおそるべき早さと轟音と共にあっという間に後方に流れ去り、
ぶれなくとらえられるのは視界の5%。
それ以外は次から次へと現れ、そして瞬時に消えていくスピードのノイズ。
必要な情報は数百メートル先のセンターラインの方向と、
数十メートル先の路面の状況だけ。
それ以外は風圧と轟音と、目を向けたらそのまま後ろに引っ張られてしまうような速度の景色だけ。
あごの先をかすめヘルメットに飛び込んでくる暴風雨いたいな風切り音と、
悲鳴を上げながらももっと鞭を入れろとテンションを上げるオートバイの振動と、
トリップしそうなくらいめまぐるしくぶっ飛んでいく闇の断片の景色が織りなす、
今の俺の世界はあまりに非現実すぎて、普通なら不安や恐怖を感じるのだろうが、
あいにく今の俺の精神状態は正常じゃないので、
むしろこの状況の方がリアリティーがあって、
生きている感覚をつかみやすい。
もし今俺がほんの数秒集中力を切らしたら僅かなハイウェイのRに追随できず中央分離帯か左端のガードレールに生身のまま激しく接触するか
あるいはマシンのバランスを崩して冷た公手堅いアスファルトに俺はたたきつけられて、
すべての関節が本来曲がってはいけない方向にまたってしまう可能性が高い。
だからこそ生きなければならないという本能が、
無意識のそこから沸き上がってくる。
その感覚は、久しく忘れていた本能。
スピードの中でしか生きられないなんて安っぽいロマンチシズムじゃあない。
ただ、生きるため、恐怖に対して本能が反射的に起動するだけだ。
それは好みの女を見たらセックスしたくなる男の性衝動と同じレベルだ。
ただ、日常のトラブルに埋没すると、
そんなシンプルな本能さえ消えて無くなりそうになる。
それはすなわち精神的な死を意味するわけだ。俺は死んでいた。
死んでいることが悪いことじゃないと思っていたが、
それでも俺の遺伝子に刻まれた本能は、生き物としての覚醒を望んだのだろう。
だから、あいつが現れた。
闇に溶ける曖昧な色彩のアスファルトが、地平線に伸びる先の、
ぼんやりとした闇空との境界に向けられ、
その視界の95%は恐怖を感じるおそるべき早さと轟音と共にあっという間に後方に流れ去り、
ぶれなくとらえられるのは視界の5%。
それ以外は次から次へと現れ、そして瞬時に消えていくスピードのノイズ。
必要な情報は数百メートル先のセンターラインの方向と、
数十メートル先の路面の状況だけ。
それ以外は風圧と轟音と、目を向けたらそのまま後ろに引っ張られてしまうような速度の景色だけ。
あごの先をかすめヘルメットに飛び込んでくる暴風雨いたいな風切り音と、
悲鳴を上げながらももっと鞭を入れろとテンションを上げるオートバイの振動と、
トリップしそうなくらいめまぐるしくぶっ飛んでいく闇の断片の景色が織りなす、
今の俺の世界はあまりに非現実すぎて、普通なら不安や恐怖を感じるのだろうが、
あいにく今の俺の精神状態は正常じゃないので、
むしろこの状況の方がリアリティーがあって、
生きている感覚をつかみやすい。
もし今俺がほんの数秒集中力を切らしたら僅かなハイウェイのRに追随できず中央分離帯か左端のガードレールに生身のまま激しく接触するか
あるいはマシンのバランスを崩して冷た公手堅いアスファルトに俺はたたきつけられて、
すべての関節が本来曲がってはいけない方向にまたってしまう可能性が高い。
だからこそ生きなければならないという本能が、
無意識のそこから沸き上がってくる。
その感覚は、久しく忘れていた本能。
スピードの中でしか生きられないなんて安っぽいロマンチシズムじゃあない。
ただ、生きるため、恐怖に対して本能が反射的に起動するだけだ。
それは好みの女を見たらセックスしたくなる男の性衝動と同じレベルだ。
ただ、日常のトラブルに埋没すると、
そんなシンプルな本能さえ消えて無くなりそうになる。
それはすなわち精神的な死を意味するわけだ。俺は死んでいた。
死んでいることが悪いことじゃないと思っていたが、
それでも俺の遺伝子に刻まれた本能は、生き物としての覚醒を望んだのだろう。
だから、あいつが現れた。
