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対峙

第3章 episode 2

狭い校内に広がる゙噂゛は、下手なウイルスより感染が早かった。
光彦は犬みたいに明るい性格で、俺なんかよりもちろん友達も多く作っていて…
その゛噂゙は光彦の耳に触れるまでそう時間は掛からなかった。
初めて失いたくないって思った。
でももう顔を合わせられない…。

『こんな噂になってるのによく平気で学校来れるよな』

『言うなよ、殺されちゃうよ』

慣れている。
いや、以前は慣れていた。
今は光彦がいるから感情が変わってしまった気さえする。

席替えのしていない教室は、まだ後ろに光彦がいるってこと。
何故か少しの罪悪感。

「おはよう」

この日は顔を見たくなくて、いつもより早く来て自席に着いていた。
光彦はいつも通り挨拶してくれた。

「なんだよ、そんな顔するなよ。…大丈夫だから」

なにが大丈夫なのか…光彦のいつもの笑顔に優しさも纏っているようで…

「…べつになんともないし」

素っ気ない返事しか出来ないボクは溢れそうな感情を堪えるのに必死だったから前を向いて応えた。

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