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対峙

第7章 episode -

夕暮れの公園に映るボクの影は、一段と長く見えた。

「…かえりたくない」

周りには同学年の奴らはいない。
…はずだった。

「家に帰りたくない?」

ボクの後ろにはボクよりは少し小さい男の子が立っていた。

「…だれ」

「みつひこ」

「…」

ボクは名前を聞いた訳じゃない。でも男の子はそう答えた。

「せいじ」

「せいじ君。ぼくのことみっちゃんて呼んで」

「うん」

そうしてボクたちは知り合った。
純真なはずだったんだ。

「みっちゃん、ボクまだかえりたくない」

「うん」

光彦はケタケタ笑い、まるで子犬のようだった。
いつしか光彦とは約束しないでも会えるようになっていた。
とりわけ友達が多くはなかったボクにとっては光彦は光に見えていた。

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