対峙
第7章 episode -
「ねえ、せいじ。どうしていつも寂しそうな顔してるの?」
ある肌寒くなってきた日に光彦はボクに聞いた。
不意に手が顔にかかる。
「寂しそう?…そんな風に見える?」
光彦と出会ってからは毎日この時間だけは楽しいのに…
「じゃあなんで家に帰りたくないなんて言ってたの?」
「それは…」
本当は話したかった。
でも話してしまえば父親の暴力の矛先が光彦に向くんじゃないかって…ボクから離れてしまうんじゃないかって怖かった。
「せいじ、大丈夫だよ。離れたりしないよ」
ボクより小さな手でボクの頭を撫でる光彦の顔は優しかった。
「あのね、みっちゃん…ボク…」
その日にボクは溜まっていた全てを光彦にぶちまけた。
光彦は頷くことしかしなかったけど、その時のボクには充分だったんだ。
一通り話を聞いた光彦は、ニコニコしながらこう言った。
「ぼくがせいじを自由にしてあげる」