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対峙

第2章 episode 1

『お母さん、お母さん…?』

ボクは探る。
暗闇を探る。
居るはずの母を探していた。

『お父さん?いるの?』

気配がある。
誰かはわからない。
やがて手に冷たい水を感じた。
瞬間、それがスイッチだったかのように辺りに光が満ちた。

ボクの手指は朱に染まる。
目の前には両親だっだ物゛
ボクは顔が汚れるのも気に止めず、自ら視界を覆った。





首筋に雫が落ちる感覚に目が覚めた。
また夢を見ていたみたいだ。
体のだるさに伴って嘔気が残る。
やったのはボクじゃない。
頭を抱え込んで否定したところで誰にも届きはしないとわかっている。

「…最悪だ」

発した言葉はかすれきっていてすぐ消えた。


それというのも、ここ数年あの悪夢は見てはなかった。
現実ではいつも隣り合わせの事実だった。
わざわざ夢で現れなくても忘れることなんてないのに。
忘れられるわけないのに。

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