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偽装結婚~代理花嫁の恋~

第6章 ★Sadness~哀しみ~★

 三鷹はその指輪を二人が出逢うきっかけとなった模擬披露宴のバイト代で買ったのだ。
 アクアマリンの石言葉は、幸せな結婚。
 由梨亜は、彼がわざわざバイト代でこの指輪を買った意味を考えた。
 たとえ住む世界がどうあろうとも、自分たちは自分たちの家庭を築き、ささやかな幸せと温もりに価値を見いだせるような関係でいよう。
 由梨亜はその瞬間、三鷹の意思を正しく理解した。
 三鷹は相変わらず、彼女から数メートル離れた場所に佇んでいる。それが彼の気持ちなのだと思った。
 無理強いするのではなく、きちんと考えて自分の意思で来て欲しいという何よりの彼の想いの表れであった。
 派手なロゴ入りTシャツに履き古したジーンズ姿の彼は、やはり大企業の副社長には見えない。
 由梨亜の眼から透明な涙が溢れる。
 梅雨明け前の夜の空気に、由梨亜の涙が溶けて散る。
 由梨亜は彼の許へと走った。
 一度しかない人生を後悔することのないように。
 三鷹がその場所で両手をひろげる。
 由梨亜はこの世でいちばん大切な男の胸に飛び込んだ。
 温かい涙が三鷹のTシャツを濡らしてゆく。
♪魔法の呪文をかけてシャララ
温かい陽射しのような
あなたの微笑みが私を照らしてくれますように
私の心を感じてみて
永遠に一緒にいよう
毎日幸せだけをあげるわ

 大好きな歌詞のフレーズがふと心をよぎった。
 未来に乾杯、私の、そして明日からも続いてゆく親愛なる日々よ、ようこそ。
                (The End )

♪ 長らくご覧頂きまして、ありがとうございました。
 三鷹と由梨亜はこの後、そう時間をおかずして今後こそ本当のウェディングを挙げたことだろうと思います。筆者 ♪
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