なつのおと
第4章 雨が降る
「なんか忘れられない人がいるんだってさ」
忘れられない人…?
海斗を超えるそいつも何者だ。
田中さんは知れば知るほど謎だ。
まだまだ遠い。
あの切ない音を紡ぎ出すその胸の内は一体何を想っているのだろう。
「ハル、もう少し時間おけよ。あずさちゃんと今日別れたばっかなんだからさ」
「わかってる………って何言ってんだよ、田中さんはそんなんじゃねーし!!」
言いながらなんか目がかゆくなったので手の甲でこする。
あ、目ってこすんない方が良いんだっけ。
「っふは、そうですか」
「そうです!あーでも俺、田中さんの音はすんげえ好き」