なつのおと
第5章 ふたりがいた夏 前編
「…あっそ。朝ご飯無くなっておなかすいても知らないからねー」
諦めたようにそう言い残してお母さんが部屋から出ていく。
しばらく毛布にくるまっていたが朝ご飯が気になってしまいむっくり起き上がって、自分の部屋を見渡す。
いろんなおもちゃで散らかった勉強机。
黒いランドセル。
そこから覗く既にグシャグシャになった宿題の紙。
持って帰ってきたホウセンカの植木鉢。
ああもうめんどくさいな。
はあ、と小さく息をついてベッドから降りる。
せっかくの夏休みなのになんで宿題なんか出すのだろう。