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なつのおと

第5章 ふたりがいた夏 前編




「…そんな前から見てたのかよ」


ボソッと呟くとカナタは俺の手をどかして再び家に向かっていく。


「ちょっ!!おいおいおい!!」


再びがしっと腕を掴むとちょっと不機嫌そうな顔をしてカナタがこっちを見る。


「誰かくるかもしれないだろ!」


「この家の見た目からして誰もこないでしょそれに…」


カナタが体をこっちに向けた。


「えっと、名前何」


「あ、え、あ、島津春…だけど」


「シュンは入りたくないの?」


まっすぐ問われた。


黄色がかった茶色のガラス玉みたいな目がこちらを見ている。


そりゃそんなこと言われたらさ…


「思う、けど…」



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