
なつのおと
第3章 遠い虹へ
暫くの沈黙の後。
「オンダイ、受けるから」
田中さんの透明感のあるちょっとハスキーな声が音楽室に響いた。
脳内でオンダイが音大に変換され、俺の頭が理解するのに3秒ほどかかった。
「えっええ?音楽大学っ!?すっげえ…」
音大、なんてだってプロになりたい人が行くんだろ!?
「そうでもない」
いつもと変わらないトーンだったため、それがどういう意味の「そうでもない」だかわからなかった。
こっちが黙ってしまうとおのずと会話がなくなってしまう。
……くそ、やっぱり話しずれえ。
