テキストサイズ

なつのおと

第3章 遠い虹へ




「なあ、弾いてよ」


俺の言葉に彼女が振り返る。


音楽室が薄暗いせいと、彼女が窓際にたっていて逆光のために表情がよくわからない。


ねえ、今何を考えているの?


「いいよ」


一昨日同様にあっさり返ってくる返事。

素っ気ない声はやっぱり澄んでいて。


ピアノにゆっくり歩いていく田中さんの背筋はぴんと伸びていて、短すぎも長くもないスカートが揺れる。


綺麗だ、と思った。


化粧してマスカラで縁取られた目で上目づかいされるよりずっと。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ