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なつのおと

第3章 遠い虹へ



「何でもない」


慌ててのぞき込もうとしたが、背を向けられた。


相変わらず素っ気ない。


クラスのきゃぴきゃぴした女子たちと比べたら大違いだ。


仕方なく寄ったついでにグランドピアノに触れてみる。


ポーンと響いた音は、さっきまで田中さんが弾いていたのと同じピアノから出たとは思えない音色で。


改めて違うのだな、と思い知る。


田中さんは未だ俺に背中を向けたまま。


しょうがないから唯一俺のレパートリーとして残っている曲を聞かせてやろうか。



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