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なつのおと

第3章 遠い虹へ





最後の一音が完全に消えて、俺はその場に倒れ込んだ。


まだ余韻が残っていて頭がボーっとしている。


そうだ、田中さん。


横を仰ぎ見ると立っていた彼女も俺と同じようにイスの向こうで座り込んでいた。



「………ったね」




確かにさっき歌っていたハスキーで透明感のある声が聞こえた。



「ん?」



上手く聞き取れなくて身体を移動して椅子の向こうを覗く。



田中さんが顔を上げた。







「楽しかったね」





心臓が一度だけ大きく鳴ったのがわかった。




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