なつのおと
第3章 遠い虹へ
「まあ、いるとは思う…けど」
素っ気ねえ!!
さっきの柔らかさは一体何処へ?
…まあ、いっか。
ちょっとだけ距離が短くなったような気がする。
黒縁メガネの奥の綺麗な瞳と俺の視線が交わっていたのもつかの間。
田中さんは直ぐに海斗の方を向いた。
………。
まだ距離は果てしなく遠い。
「じゃ!!あとは二人でごゆっくり!」
わざと音を立ててドアを閉める。
海斗の馬鹿!
クーラーが付いていた訳ではないのに音楽室の外の空気をなんだか暑く感じた。
さて、行くか。
ココに来たときよりも遥かに重い足取りで自分を待つかわいい彼女の元へ急ぐ。
明日、またここに来よう。
俺は他人との距離を縮めたいと、とても久しぶりに思ったということに気が付いていなかった。
*第三章 遠い虹へ end *