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なつのおと

第3章 遠い虹へ




「うわやっべえ、最悪!」


鞄を乱暴につかんで音楽室の出口へと急ぐ。


途中机にぶつかってガタンと大きな音を立ててしまった。


「わり、田中さんもう行くわ。さっきのすんげえ楽しかった。海斗さんきゅ!んじゃ!」


早口にまくし立ててドアを開ける。


あ、と思い出して足を止めた。


「…田中さん、明日も…ここにいる?」


バタバタしている俺を座り込んだままポカンと見ている田中さんに、声を投げかけた。


彼女のピアノが聞きたくて。


彼女のピアノが聞ける保証が欲しくて。


明日も。



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