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Uターンズ

第4章 近距離

「そう、パパがいるから遊びたがるんだけど…二言目には『仕事で疲れてるから』…すぐ怒るし」


葉子は、別れた夫を思い出した。

似てる……。

薫がまだ夜泣きしてた頃、うるさい、俺は疲れてるんだ…って怒ってたっけ。

休日に少々遊んではくれるものの、30分も経つと「疲れた」……。


「セミ、掴めない~」

いつの間にか子ども達の声が近くに来ていた。

虫籠を持った茜と、薫。それに夏子の次男の駿也。


「なんだよ~茜、6年生のくせにまだ蝉こわいの♪」

茂は娘のおでこをつつく。

「だってぇ、ジリジリいって痛いもん」
「シュン、お兄ちゃんは?」

夏子が次男に訊く。駿也は後ろを振り返ってから口を尖らせた。

「おみずのとこ行っちゃった… カニ探すって」
「今、亜弥ちゃんが見張ってくれてる」

茜は父親の袖を引っ張った。


「しゃーない、行くかぁ!」

茂は皿に残っていた肉をつまみ、口をもごもごさせながら立ち上がった。

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