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Uターンズ

第4章 近距離

「亜弥も虫、苦手だよな」
「ね!」

茂がいなくなった後、守本夫妻の会話。父親の膝の上で次女の千穂は、かなり眠そうだ。


「ベビーカーで一周したら、ころっと寝そう」
「俺、行ってくるよ」


テーブルは女3人になった。


「あーあ、世の中にはこんなにマメなパパがいるのね~」

夏子は少し、酔いが回ってきたらしく、声が大きくなってきた。

「小谷家と守本家の妻は幸せ~」
「あ、小谷さんとこ父子家庭なんですよ」

直子の言葉に、葉子と夏子は顔を見合せた。

「詮索するのもナンだから細かい事情よく知らないけど、近くに住んでるのはモト奥さんのご両親みたい… ウチの主人が飲み会で聞いてきたの」

「そうなんですか…」

そういえば会話の中に、母親の話が全く出てこない…と葉子は思った。

お祭りの日、そして今日。まだ2回しか会っていないのだが……。


死別か離婚か。

茜は母親の存在を、どう認識しているのか…。


「佐伯さん」
「あ…」

夏子が缶ビールを掲げてニコッと笑う。

「それともワインにします?」

「あ…そうしようかな」
「佐伯さん結構強いよね!」

新しい紙コップに赤ワインが注がれた。

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