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Uターンズ

第6章 家族

その日はセミナーが終わると、会社には行かなくていいことになっていた。

(久々に薫とゆっくり、夕ご飯が食べられる)


そんなことを思っていると、ケータイが鳴った。

葉子の母からだった。


「茜ちゃんが来ててねぇ、北山のバーベキューの話してたんだけど……薫ったらウチの庭でやりたいって言い出したのよぉ」

「え~、今日?」

「そういや葉子、今日は帰りが早いって言ってたと思ってさ… お父さん、あさってからしばらくいないしね…茜ちゃんと、もし出来たら」


「小谷さん…どうかねぇ」

葉子はなぜか、胸がドキドキした。

「あ……うん、いいんじゃないかな…声かけてみる」


帰りに買うものを聞き、葉子は電話を切った。


(小谷茂…)

アドレス帳を検索し、茂のデータを出す。

何かの時のために、自宅とケータイの番号を交換していた。

(仕事中かな…)


電話をかけるのは初めてだった。

呼び出し音が5回、6回……

(やだ、何でこんなにドキドキするの?)


10回鳴らしたところで葉子は、諦めて電話を切った。


地下鉄に乗ると、電話は繋がらなくなるな…

駅までの道を、ケータイを握りしめたまま歩いた。


爽やかで、若々しくて…… 雅美の言葉が耳の奥に蘇ってくる。


(もうすぐ駅…)


ケータイが鳴る。

液晶に『小谷茂』

「はい……佐伯です!」

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