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A fin-de-siecle angel

第1章 A

私にはわからなかった。人というものが。

神から与えられたこの才能の使い道は、どうやら少し間違えていた様だ。


私は、ついさっきまでギロッポンのバーでカクテルを飲み訳の分からない事を心の中で呟き千鳥足で友人裕美の所へ向かい無駄話しをして四つ角を曲がり今に至る。



そう、会社をクビになったと申した。ああ、そういや私幸せになったんだっけ。

恐らく、この話しを誰かにしたら「不況の時に可哀想に」と同情の準備をして頂く事に違いない。いや、そういう方々には申し訳ないがあいにく旦那が以前から

「純…俺とおまえは結婚してるだろう…?」
「純…君には苦労を掛けたくない。稼ぎは僕だけで十分やっていける。無理をする事はないんだよ…」

と、呪文をとなえている。彼は恐らくヨーロッパ辺りで山中で五千年くらい修行を積んだ魔法使いだ。奴の魔法は効果テキメンだった様だ。

そんな魔法にかけられた人妻の表の顔は言うまでもないが、このつまらない魔法使いの家で帰りを待つだけの生活をするより、金を稼ぎに行く方がどんなにメリットがあるだろうか。


「ありがとう…気持ちだけでも嬉しいの…でもね?いま辞めたら会社の人に迷惑がかかっちゃうでしょ…?大丈夫、私、あなたの事一番頼りにしてるから!」


私はこれを「60年ルール」と名付けている。
早々離婚する時か…
まぁ、つまり死ぬ間際までこれを貫いて死後の世界はどーせヒマだからコレをネタに笑って過ごそうという人生においてのテーマを達成する為のルールである。

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