眠れぬ王子と猫な僕
第9章 風邪
―――――夢をみた
暖かくて優しい感触………
僕はこの温もりが何かを知っている。
まるで割れ物を扱う様な、
優しい触れかた………
紛れもなく、これは、あなたの手。
――――瑛兎さんの、手
僕はこの手から、
この人から離れなくちゃいけない。
頭では判っていても、
ずっと触れていて欲しいとねだってしまう。
『妖巳……』
澄んだ声で僕の名を呼ぶ声がする。
綺麗な夢は、一瞬で悪夢に変わる。
『無能なアンタに、行くとこなんてないわッ!!アンタは馬鹿みたいに私の言うこと聞いてればいいのよ。』
また、
まただ。
いつのことだっただろう……
冷たくいい放つ母の顔が浮かぶ。
鮮明に、母の記憶が蘇る。
僕を蹴り、踏みつけて笑うお母さん。
―――ごめんなさい、ごめんなさいお母さん。
産まれてきて、ごめんなさい……
冷たい何かが頬を伝っていくのを感じた。
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