眠れぬ王子と猫な僕
第9章 風邪
正直、起こそうかと思った。
だけど、妖巳の口から聞こえた言葉が
俺の行為を制した。
「お、おのさ、ん?」
妖巳の目は薄く開いていて、
とろんとしたまま、俺を見ていた。
そう。
その目は確かに俺を見ているのに、
妖巳が呼んだのは、
妖巳が怖がっていた男の名前。
「……………ムカつく。」
途端に俺の中で2つの感情が芽生えた。
―――嫉妬心と、独占欲。
俺を目にして、なぜその名を呼ぶ?
何故俺以外の男を………
妖巳、君は俺だけを見ていればいいのに。
君を閉じ込めてしまいたい。
けど、それは今の君を最も傷つける。
それじゃあだめだ。
意味がない。
だったら誰より君の近くにいよう。
離さない、君は俺が護るから………
「…………………ん?あれ?瑛兎さん??」