眠れぬ王子と猫な僕
第9章 風邪
強張っていただろう顔を笑顔に作り直して、起こしてしまったことを謝る。
「瑛兎さん!!風邪は?」
驚いた顔はやっぱり可愛い。
「もう治ったから、大丈夫。随分魘されてたね……。」
すると、妖精巳の肩がびくッと跳ねた。
「寝言、聞こえたから。気になって。」
「…………昔、お母さんに言われたこと、思い、だして。」
涙で濡れた瞳を両手で擦り、何か言いたげに俺を見つめる。
理性が飛びそうなのをどうにか堪えて、質問する。
「どうかしたか?」
「なんでも……ない?」
な、なんで、
疑問形?
「僕、「寂しかった?俺が居なくて。」」
なんとなく妖巳の続く言葉が聞きたくなくて、喋る。
「…………もぅ、お、怒ら、ない?言っても、ぉこ、んない?」
放たれた言葉は、震えていた。
「怒る?もうって…………。あ!?部屋から追い出したこと?」
「……ぅん。」
なんか、拍子抜けしたぁ。
「あれは、妖巳に風邪が移るからだって…。いっただろ。」
「ほんとに、それ、だけ?瑛兎さんがいない間、不安だった………」
「怒らないから、答えて?」
「うんとね、明日香さんにね、料理教えてもらった。………でもね、寝るとき瑛兎さんが居なくてね?寂しかった………」
恐る恐る、俺の表情を確認しながら喋る。
しかし、料理とは以外だな。
「そうか。料理を教わったの?何を作った?」
「あっ!だ、だめだめ。内緒だから………」
「内緒?え〜、早く知りたいな。」
「今度作ってあげる!それまで内緒、だよ?」
そう言って小さく笑う。
顔を真っ赤にしているから、
妖巳の中ではかなり大胆なことをしてしまったつもりなんだろう。
確かにあの妖巳の上目遣いに、
『内緒、だよ?』
なんて言われれば、男女問わずに悩殺だな。