眠れぬ王子と猫な僕
第9章 風邪
「…………首輪。」
「えっ?」
妖巳はゆっくり喋り始めた。
「首輪、ね。大野さんに初めて会った時に、付けられた。」
「大野………」
また、アイツかッ!
「僕が逃げない様にしたんだろうけど、大野さんは、今日から俺の飼い猫だからって言った。」
……………待てよ。
その言い方、まるで自分だけの物にしようとしてる様じゃないか?
いや、それはないか。
妖巳の母の愛人だもんな。
「首輪の鍵は大野さんしか持ってなくて、お客さんは大野さんに鍵を借りるんだ。お客さんが来た次の日は、必ず大野さんが来るッ…………」
苦しそうに、語る姿を見ると、余程怖かったんだろう。
まして、妖巳が大野に出会ったのは12歳の頃。
小さな妖巳に、16歳の男は手を出した。
その行為が恐怖以外の何を植え付けると言うんだろう?
そしてそんな男から貰った首輪を俺の可愛い妖巳が着けている。
「大野さんは、僕に近寄って来て必ずキスをするんだ………。抵抗すると首輪を引っ張って、お前は誰の物だ?って聞いてくるの………僕は大野さんので、お母さんのでッ!!」
尚も苦しそうに話を続ける妖巳の瞳が急に紅く染まった。
この世の全てを飲み込むような、
それは、
――――緋色。