眠れぬ王子と猫な僕
第9章 風邪
瞳の色の変化と同時に、白いふさふさの耳と細くて柔らかそうな尻尾が出てきた。
初めてみた、変化時の妖巳。
―――麗しく、美しい。
だが、妖巳の心の乱れは半端じゃなかった。
「僕はッ、お母さんと大野さんの物だ!!どうしようっ!僕っ勝手に逃げ出した!!」
「よ、、、み…?」
全身の毛を逆立てて、目には混乱の色が映り、何者も拒絶していた。
「どうしようッ!!お母さんに怒られる!嫌われる!!またッ、捨てられる!捨てないでっ、お母さん!!」
(お母さん、お母さん!)
必死で母を呼んでいる。
妖巳は、愛情を得られなかった分、精神的発達が進んでいない。
恐らく、6歳から8歳で止まっているんだ。
何故気付けなかったっ!!
あの甘え方、不安定な心の動き。
そして、子供にとってどんな母も好きだというのは当たり前だ。
妖巳にはまだ母親を忘れられない。
いつもならそんなことは無いだろうが、今みたいに爆発した時に、たまっていたものが流れ出す。
「帰らなきゃ……。お金が稼げないとお母さんが、僕を嫌いになる!大野さんにも謝ってっ、奉仕、しないと。大野さんが、お母さんと別れるって言うから……!――帰らなきゃッ!!!」
「ま、待つんだ。妖巳。」
ベッドから出ようとする妖巳の腕を掴む。
「っや!離してッ!!」