眠れぬ王子と猫な僕
第11章 学園と嫉妬と危険な香り
すっかり俯いて固まった僕に手を添えて、藤牧先生が声を上げた。
「しーずーかーに!雨凪くん、自己紹介どうぞ。」
「はいっ!……えっと、雨凪、妖巳です。ょろしく、ぉ、お願いします!」
「声高けぇ!名前もかわいいし。」
「まなチャン、妖巳チャンの席どこ?」
「そぉね、秋津くんの隣空いてるわね。手あげて。」
「やった!妖巳チャンこっちこっち♪」
「おい!ずりーぞ、アッキー!」
「皆騒ぎすぎよ。雨凪くん、席について。」
僕の席は窓際の一番後ろだった。
列の間を通る時にお尻を触られて凄く怖かった。
「お前、なに触ってんだよ。」
「いいだろ。我慢できねぇ。」
後で笑い声が聞こえたけど構わず席についた。
「雨凪くんいじめないでよ?じゃHR終わり。」
「ねぇ、妖巳チャン♪」
「な、何ですか?」
「いや〜まじ可愛いね。付き合ってよ♪」
「………ィャ、です」
「アッキー、抜け駆け厳禁だろ。」
「その通り。ね、アドレス教えて♪」
「携帯持って、ないです……」
「なら買って貰いなよ。俺は、高瀬な。」
「俺は、時村。」
「ちょ、二人邪魔すんな。妖巳チャンは俺の彼女にすんだから。」
「フラれてただろ。俺、牧園っていいまぁす。よろ♪」
「妖巳チャンてさ、姫だよね。女子より可愛いよ。」
「確かに姫だな。てか、ハーフ?」
「ぉ、お父さんが、ハーフです。」
「じゃあクォーターか。可愛い♪」
沢山の人に囲まれてしまった。
皆僕より大きくてとても逃げられない。
その時、
「妖巳!いるのか?」
廊下から聞き慣れた声がした。