眠れぬ王子と猫な僕
第12章 甘美な誘惑
「了解。聞いてた、妖巳?」
「うん……大丈夫。」
「よし。じゃあ各自教室に行こう。」
「俺は1年のとこ行くから。妖巳、行こう。」
「……うん。ふにゃふにゃ……♪」
妖巳は、小さな体に不釣り合いなサイズの学園指定の鞄を両手で抱えて歩く。
ふわふわした足取りで、教室に向かっている様は、本当に仔猫に見える。
俺の先を歩いている妖巳は、時々振り返っては俺が居るか確認してはにかむ。
「瑛兎さぁん、はやく〜」
「ああ、ごめん。」
「妖巳、そんなんで授業受けられるのか?」
「大丈夫……だよ。」
――ガラガラッ
教室には秋津と赤司と高瀬がいた。
それを見た妖巳の顔から血の気が引いていく。
「ゃだ……、なんでもう……いるの…?」
「大丈夫。HRまでいてあげるから。」
妖巳は俺にぴったりくっついて、教室に入ろうとしない。
「ほら、鞄置かないと重いでしょ?」
「重く、ないもん……」
「荷物、置きに行こう?」
「うぅ……」
妖巳の手を引いて、教室へ入ると早速声をかけてきた。
「おっ、姫じゃん。おはよー」
「なんか余計なのいるよな。おは、姫。」
「外野は失せろ、みたいな?おはよ♪」
そいつらを無視して鞄を置かせる。
そのまま踵を返して、廊下へ戻る。
妖巳は無言で俺の後ろをついてまわっていた。
「そんなに怖い?」
「だって、みんな大きい……」
「ああ、確かに。」
「そう言えば、妖巳は今日体育あるよね?」
「……うん。」
「大丈夫?その……体力的に…。」
「多分……。…自信ないけど……。」
「何するの?」
「バドミントン……」