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第8章 狂い出す歯車

「嘘だね」

そう聞こえたときには、名取の手が顔を自分の方へと向けさせた。真剣な目差しと目が合い、目を見開く私

「嘘つき、泣いてるよ?」

「ちが、これはっ……」

溢れた瞳から雫が流れ、止まらなくて
言葉が見つからない。

名取の表情がフッと、柔らかく変わると
暖かな胸に抱き締められた。

「はい、はい、もう一人で泣かないでね」

ポンポンと背中を優しく叩く手に、我慢の限界だった。すがるように、泣き出した私を名取は背中を擦り胸を貸してくれた。

その優しさに
甘えてしまった

私は知らなかった
それを見ていた人がいたなんて……

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