トライアングル・ラブ
第28章 居場所
誰にも見られない安心感からか、私は我慢していた涙を流した。
私は帽子の前のつばを右手で掴み、グッと下に下ろした。
すると左腕を引っ張られ、私の足は自然に動いた。
どこに行くのか分からないが、私は引っ張っている相手に身を任せた。
引っ張っている相手はおそらく裕也だから。
しばらく歩くと、段々と人の声が小さくなっていった。
どこに向かっているんだろうという疑問はあったが、涙は止まることはなかった。
すると、“ガチャッ”と音が耳に響いた。
おそらくドアを開けた音だろう。