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みえない鎖

第29章 絡むしがらみ

「今年中に、席は入れる予定。でも式は・・・ハル次第。仕事忙しいから、合わせるしかないし。って私の話はどうでもよくない?」

「どうでもいい訳ないだろ?」

こっちにも都合ってものがあるんだよ、色々と・・・とは言わない。話すと兄貴にまで筒抜けになる、はず。

その後、会って話すのは久しぶりだったから、あれこれ他愛のない話をして、彼女はさっさと席を立った。

で、席を立つ前に『払っておくから』って伝票掻っ攫われた。むしろ奢ろうと思ってたのに、

何となくヤラレタって気分でコーヒーを飲み終えた時だった。

ガシャンッッと、甲高い音が店内に響き渡る。

そそっかしい奴がグラスか何か落としたな、ぐらいの感覚で落とした方向に目をやる。

固まる瑠璃の姿を先に捉え、その視線の先にある奴を次に捉えた時、

何とも言い難い複雑な気持ちに支配されるまま、左手に封筒を携え、一直線に歩いていった。

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