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みえない鎖

第30章 解くしがらみと甘い誘惑

アキがあのまま突っ走らず、中断した理由。それは単純に・・・、

「腹減った」

って事だった。ぼそっと呟いた言葉が、何だか子供っぽい。

どうやら、仕事は上手くいったものの、午前中の資料製作に追われて、まともに昼食を取らなかった、らしい。

「一応、相手は部長だし。不備があって、後日呼び出されんのが一番困るからな。今週末まで仕事する気ねえし。

付け入るスキを与えない完ぺきな物、と思ったら、メシは後回しになったな」

適当に出来るパスタ料理とサラダを並べ、食べ始めてから教えてくれた。

「後は今、食っといた方が、デザートがゆっくり堪能できるって話だろ?」

ニヤリと明らかに企んだ顔のアキ。まともに見てしまい、うっ・・・と固まる。

「い、いいから、食べちゃってよ」

目が彷徨い、頬が熱を持つ。
・・・いつになったら慣れるかな。

一口パスタを食べてから、冷静になれた気がしてアキに視線を戻したけど・・・。

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