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彼の兄

第3章 好きなのに

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「うわー混んでる…大丈夫?」
帰宅ラッシュのせいか電車内はひどく混んでいた。
私は波に飲み込まれそうになる。
「ひゃっ!!」
後ろにいたサラリーマンの足が私の足に食い込み、バイブが押し付けられた。
しかもその状態が続く。
昌樹は全く気付いていないようだった。

必死にこらえてるその時だった。

「アッ」
急にバイブの強さが強くなった。
さっきまでの優しいゆっくりな振動から、強く激しいものに。
「や…」
涙が溢れてきた。駄目。
いやだ…たすけて…

「日菜?降りるよ?」
昌樹が私の手を引っ張り、車内から連れ出した。
息が整わないわたしの背中をさすってくれた。
「ご…めん、有難う」
「いや?いいよ、顔色悪いし…日菜今日は帰ろうか」
もう一度手を差し伸べてくれた。
私も握り返した、その時だ。
 

「昌樹?日菜ちゃん?」
 

その、まるでゆっくりと近付いてくるヘビのような…。 

「お、兄貴じゃんどうしたんだよ」


そこには和かに笑う拓磨さんがいた。

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