
君がくれたぬくもり
第45章 逃走
「陽菜…お前……」
「違う……違う……ッ」
目を丸くさせる岳。
陽菜は真実を知られるのが怖くて、ただひたすら首を横に振り続けた。
「違わねぇよ?
ベッドの上で泣いて喜んでたもんなぁ?」
その刹那、
岳の表情が変わった。
「てんめぇ!!ぶっ殺す!!」
「ぐあっ!!」
―――バキッ!!
岳の右手が龍之介の顎にヒット。
そのまま岳は龍之介に跨がり、何度も何度も殴りつづけた。
「陽菜を傷つけてんじゃねぇよ!!俺の女だぞ!!おい!」
「……っ…」
―――バキッ
――――バキッ、ボキッ
何とも言えない鈍い音だけが静かな夜にこだまする。
岳、強いんだ…
相手はヤクザなのに…
ヤクザの若旦那なのに…。
龍之介の意識が飛ぶ。
ついにはピクリとも動かなくなった。
「……はぁ、…はぁっ…」
「岳………っ」
「陽菜、お袋の居場所教えろ……」
