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君がくれたぬくもり

第49章 mother



―――――……




あれから数日



左手のギプスが取れた。




「はぁ……」



怪我が治るのは嬉しいことだ。



でも心の中は穴だらけ。




毎日病室のドアを見つめ


もうここには来ないあいつが来るのを期待する。



来るわけねぇのにバカみたいだな…




その時だった。



―――コンコン



「……!!」




一定の時間に看護師くらいしか出入りしないドアがノックされる。



慌ててボサボサの髪の毛を手で整えた。




―――ガラガラガラ



「失礼します」




入ってきたのは陽菜ではなく…





五年前、突然俺と怜香を置いて行方をくらませた母親だった。




「岳……?」


「………。」




たしか…


陽菜が誘拐された場所に同じように監禁されてたんだっけ。




「久しぶりね。
あ、ケーキ買ってきたけど食べる?」


「あー…後で陽菜が食うから冷蔵庫……」




って……


何言ってんだ俺。



ついいつもの癖が出た。




「冷蔵庫…」


「いや、やっぱ食う。」




お袋はニコッと笑ってケーキの箱を開けた。





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