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神さま、あと三日だけ時間をください。

第2章 ♭ミュウとシュン~MailsⅠ~♭

「本当にごめん。こんなに紅くなって。痛かっただろ」
 シュンは狼狽え、しきりに謝った。
「気にしてないから」
 美海が弱々しく微笑むと、シュンは少しだけ安堵の表情を滲ませる。
「お願いだ、もう逢わないだなんて言わないで」
 縋るような表情と頼りなげな物言いは、あたかも幼児が母親に置いていかないでと必死に頼んでいるようでもある。
「判ったわ」
 美海の返事を聞いて、漸く心から安心したらしい。シュンは満面の笑顔を浮かべた。
 歳の割には老成しているように見えるけれど、喜怒哀楽をはっきりと表すところは、やはり、年相応だ。
「ねえ、結婚を前提に付き合ってくれないかな」
 突然の科白に、美海は再び言葉を失う。この若者の言動には愕かされることばかりだ。
「本気なの?」
「もちろん。こんなことで嘘は言わないし、良い加減な気持ちでプロポーズなんて口にはできないよ」
 美海は溜息をついた。 
「今は熱くなってるから、そんな風に考えているだけよ。シュンさんはまだ若いんだもの。大学を卒業して、どこかに就職すれば、また世界が今までよりぐっとひろがるわ。社会に出れば、もっともっと色んな人との出逢いがあるし、素敵な女性とめぐり逢うこともあるでしょう。何もそんなに焦る必要はないのよ」
「焦ってなんかないよ。それは確かに、俺の言ってることは、おかしいのかもしれない。初対面の君に結婚しろだなんて迫ってるんだから」
「おかしいことか、そういう問題ではないの。あなたはまだ学生だから、ちゃんと大学を終えて社会に出てから結婚のことを考えても遅くはないって言いたいの。むしろ、一時の気の迷いで、私なんかにプロポーズしたら、後で後悔することになっちゃう」
「ミュウはどうして俺の気持ちを判ってくれないんだ? 俺は君のことをこんなに好きなのに。君に逢ったのは今日が初めてだったけど、俺はこの一ヶ月間、君とメールを通して話をする度に、どんどん君のことが好きになっていったし、実際に君に逢ってからは、もっともっと好きになった。今更、ここで諦めろと言われても、諦めきれない」

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