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神さま、あと三日だけ時間をください。

第2章 ♭ミュウとシュン~MailsⅠ~♭

「―」
 美海は困惑して、シュンから視線を逸らした。何という熱烈な告白だろう! 琢郎からプロポーズされたときも、こんなに一途に告白された記憶はなかった。
 そして今、それを迷惑だと思う気持ちよりは、むしろ女らしい歓びの方が大きい。どうかしているのはシュンだけではない、自分もだ。
 美海の沈黙をシュンは誤解したようだ。
「駄目なんだね」
 彼は沈んだ声音で呟いた。
「ミュウの応えは何となく想像はついていたよ。メール交換してた時、君に子牛が生まれたときのことを話しただろう? 俺が嫁さんを貰って娘が生まれたら、嫁さんの名前をつけたいって話は憶えてる?」
 美海が頷くのを見、シュンは淋しげに笑った。
「あのときもミュウは俺の話なんて聞かなかったようにさりげなく無視したし、今日だって子牛のミュウに君を彼女だって紹介したときも何も言わなかった。あれで十分、ミュウの気持ちは判った。俺だって、そこまで馬鹿じゃないし」
「無視したわけじゃないわ。あのときは、どう応えて良いのか判らなかったから、黙っていたの」
 それは正直な気持ちだった。シュンより十七歳も年上で、おまけに家庭持ちの自分。そんな自分が若い男に口説かれたところで、何と反応すれば良いのだろう。
「ねえ、これだけは応えてくれない?」
 シュンが切なげな口調で言った。
「俺のこと、ミュウは嫌い? これから先、俺には見込みは全然ないのかな」
 美海は息を呑んだ。正直に応えれば、一つめの質問にはNO。むしろ、彼と同様、メールのやりとりをしている頃から、少しずつシュンに惹かれていた。こうして実際に対面してみてからは、彼の強引さと一途さに戸惑いながらも、強く求められていることに女としての歓びを感じている。好きか、嫌いかと問われれば、間違いなく好きと応えるだろう。
 二つめの質問についてはYesとしか応えようがない。琢郎と離婚すれば、美海は自由になる。シュンと付き合うことも結婚すらも夢ではない。しかし、そんなことが現実にあり得るだろうか?
 世の中には確かに歳の差カップルはたくさんいる。中には結婚して、順調な結婚生活を営む夫婦だって現実には大勢いるのだ。

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