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山茶花(さざんか)の咲く村~男装美少女の恋~

第5章 旅立ち

 凛花は束の間、何かに耐えるような表情をしたかと思うと、まとわりついて離れない愛しい面影を頭の中から追い出すように緩くかぶりを振った。
 意を決して立ち上がり、もう一度、眼下の都を眺める。凛花の頭上に黎明の空がひろがっていた。
 点景となった都を背景に、今しも日輪が赤々と燃えながら昇ろうとしている。雲間からひとすじの光が差してきた。
 冬の弱々しい光が凛花には強さを秘めたものに見える。あれは希望の光だ。
 朝鮮という国を照らすひとすじの光、凛花に希望を与えてくれる光。
 端整な横顔を今日、生まれたばかりの太陽の光が照らしている。
「そろそろ行くとするかな」
 凛花は振り分け荷物を背負うと、輝く太陽に向かって伸びるひとすじの道をゆっくりと歩き始めた。
                              (第一部・燃え堕ちる月終わり。
明日から第二部に入ります)

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