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山茶花(さざんか)の咲く村~男装美少女の恋~

第7章 花の褥(しとね)で眠る

「だが、私に力を貸してくれるとも言った。ならば、そなたの身の安全は私の責任にも拘わってくる」
 インスが初めて破顔した。
「あまり難しく考えすぎるな。格好つけて自分たちの問題だからと言ったが、そなたでなければ、協力しようという気にはならなかっただろう。こう見えても、人の好き嫌いは結構烈しいんだ」
 最後は戯れ言めいて笑いながら言う。
 それが半分は本音であり、半分は凛花に必要以上に気を遣わせないとする優しさなのだ。
 思わず胸が熱くなり、凛花は何も言えなくなる。
 インスが更に揶揄するように言った。
「それに、そなたが私の身をそこまで案じてくれるのも、満更、義務や責任感だけではないのだろう? 少なくとも、私はそう思いたいぞ」
 思わせぶりな流し目を寄越され、凛花は真っ赤になった。
「な、何を言ってるんだ。インス!」
「おいおい、そなたの方こそ何を勘違いしてるんだ。私は、そなたにとって私自身が大切な友人になれたのではないかと言ってるだけなんだが?」
「そうだよ、インスは私にとっては大切な仲間であり友人だ」
 ふて腐れたように言う凛花を見て、インスが凛花に笑いかけた。これまで何度かインスが笑うのを眼にしてきたけれど、ここまで屈託ない笑顔は初めてだ。
 そうすると冷ややかな印象がどこかに飛んでいく。間近で見たインスはやはり顔立ちが整っていて、見惚れるほどの美男であった。
「全く、そなたという男の本性を読み間違えていたよ」
 凛花が呆れたように首を振ると、インスが愉快そうに笑った。
「一体、私をどんな奴だと思ったんだ?」
 凛花は半ば自棄で応えた。

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