山茶花(さざんか)の咲く村~男装美少女の恋~
第1章 騒動の種
豪奢なチマチョゴリを着せられたその人形の身体には無数の針が刺され、思わず身の毛がよだつほどの怨念が伝わってきたという。その話は更に女官たちの口を経て王城内に広まり、ここに至って流石に清宗も淑嬪を庇い切れなくなった。
決定的証拠となったのは、淑嬪の居室に飾っていた螺鈿細工の箱から同様の人形三体が見つかったことである。ご丁寧にチマチョゴリまで着たその人形は誰が見ても、貴人の部屋の床下で発見されたのと全く同じものであった。
しかも、淑嬪にとって不幸なことに、貴人が亡くなってから一年に満たない間にも同様の事件が続いていた。即ち、清宗の寵を受けて懐妊した妃や女官が立て続けに三人も流産し、その中の一人は貴人同様、亡くなったのだ。
淑嬪の部屋で見つかった人形の数と貴人を除いて流産した妃たちの数が一致したことも淑嬪の立場をますます悪化させ、その容疑を揺るぎのないものにしてしまった。
―殿下(チヨナー)、このままでは後宮内に示しがつきませぬ。内命(ネミヨン)婦(プ)のこととはいえ、畏れ多くも殿下の御子を宿した妃を呪詛するとは即ち殿下に対する反逆罪も同様です。どうか淑嬪の身柄をを義禁府に引き渡し、すみやかに法の裁きを受けさせて下さいませ。
清宗の正妻である中(チユン)殿(ジヨン)―王妃自らが王に迫ったこともあり、清宗はやむなく王妃の意を入れた。淑嬪は義禁府に連行され、厳しい尋問を受けることになった。
淑嬪は王との間に翁(オン)主(ジユ)三人をあげている。三人の姫の生母である淑嬪に対してはいささか厳しすぎる扱いだとの声も上がったものの、気の弱い国王は王妃に頭が上がらない。
誰もが事のなりゆきを息を呑んで見守った。最悪の場合、淑嬪は位階を剥奪され、廃妃となる可能性も考えられた。
しかし―。この事件は意外な形で結末を迎えた。淑嬪の取り調べを担当した義禁府の武官はかねてから、この事件の奇っ怪さを怪しんでいた。まず、証拠がなさすぎる。国王の子を宿した後宮の女が続けて流産したからといって、それが呪いによるものだと決めつけるのは、あまりにも早計だ。
状況証拠があるとはいうものの、これだけですぐに淑嬪の仕業だと断定できるものではない。誰かが意図的に淑嬪の失墜を狙って画策したのかもしれない。
決定的証拠となったのは、淑嬪の居室に飾っていた螺鈿細工の箱から同様の人形三体が見つかったことである。ご丁寧にチマチョゴリまで着たその人形は誰が見ても、貴人の部屋の床下で発見されたのと全く同じものであった。
しかも、淑嬪にとって不幸なことに、貴人が亡くなってから一年に満たない間にも同様の事件が続いていた。即ち、清宗の寵を受けて懐妊した妃や女官が立て続けに三人も流産し、その中の一人は貴人同様、亡くなったのだ。
淑嬪の部屋で見つかった人形の数と貴人を除いて流産した妃たちの数が一致したことも淑嬪の立場をますます悪化させ、その容疑を揺るぎのないものにしてしまった。
―殿下(チヨナー)、このままでは後宮内に示しがつきませぬ。内命(ネミヨン)婦(プ)のこととはいえ、畏れ多くも殿下の御子を宿した妃を呪詛するとは即ち殿下に対する反逆罪も同様です。どうか淑嬪の身柄をを義禁府に引き渡し、すみやかに法の裁きを受けさせて下さいませ。
清宗の正妻である中(チユン)殿(ジヨン)―王妃自らが王に迫ったこともあり、清宗はやむなく王妃の意を入れた。淑嬪は義禁府に連行され、厳しい尋問を受けることになった。
淑嬪は王との間に翁(オン)主(ジユ)三人をあげている。三人の姫の生母である淑嬪に対してはいささか厳しすぎる扱いだとの声も上がったものの、気の弱い国王は王妃に頭が上がらない。
誰もが事のなりゆきを息を呑んで見守った。最悪の場合、淑嬪は位階を剥奪され、廃妃となる可能性も考えられた。
しかし―。この事件は意外な形で結末を迎えた。淑嬪の取り調べを担当した義禁府の武官はかねてから、この事件の奇っ怪さを怪しんでいた。まず、証拠がなさすぎる。国王の子を宿した後宮の女が続けて流産したからといって、それが呪いによるものだと決めつけるのは、あまりにも早計だ。
状況証拠があるとはいうものの、これだけですぐに淑嬪の仕業だと断定できるものではない。誰かが意図的に淑嬪の失墜を狙って画策したのかもしれない。