
山茶花(さざんか)の咲く村~男装美少女の恋~
第8章 発覚
この世のものではないように美しい白馬に乗りながら、凛花は泣いていた。涙が凍てついた冬の大気に散ってゆく。
凛花が向かったのは、玻璃湖であった。
玻璃湖そのものは、湖としては中規模どころの大きさである。それでも、凛花たちが佇む湖岸から向こう岸までを見通すことはできないから、かなりの規模ではあるのだろう。
一見すると、海と間違いそうだ。
冬の真っ盛りの今、玻璃湖は凍結していた。木靴でも履いていれば、湖面を滑れるのになと、凛花は一面、氷の海と化した玻璃湖を眺めながら思う。
玻璃湖は〝幻の湖〟と呼ばれるほど、不思議な湖だ。冬に凍るといっても、湖面すべてが凍結するわけではなく、ほんの一部が凍るにすぎない。とはいえども、凛花の立つ湖畔からは氷しか見えないゆえ、一部というのも額面どおりに受け取ってはいけないのだと判る。
玻璃湖が何故、〝幻の湖〟と呼ばれるのかは、その特異性にあった。この湖は海水と淡水、場所によって水質が異なっているのだ。
二つが微妙に入り混じっている部分もあれば、殆ど海水、淡水に近い部分もそれぞれある。
ゆえに、海で採れるはずの栄螺や鮑、海苔、昆布、その他、諸々の魚などが採れる。むろん、捕れる魚は淡水魚、汽水魚(塩分と淡水の混じった湖を汽水湖と呼ぶ)、海水魚と種類も雑多で豊富である。更に、白蝶貝や真珠の収穫もあった。全く異なる二つの性質を合わせ持つことにより、この湖は昔から多大な恵みを人々にもたらしてきた。
この地方は元々、土地が荒れ痩せているため、農耕には適していない。しかし、玻璃湖がもたらす様々な恵みにより、民は生きてこられたのだ。その名の由来は、春から夏にかけて、湖が陽光を受けて煌めく光景が信じられないほど美しく、玻璃(ガラス)のように見えるからと謂われているが、つまびらかではない。
湖は山茶花村を抜け、北に向けて馬を四半刻ばかり駆けさせた場所にひっそりとひろがっている。周囲には人家とてなく、ただ枯れた芦原が見渡す限り続くだけだが、今は降り積もった雪が冬枯れの荒涼とした野を幻想的に飾っていた。
凛花が向かったのは、玻璃湖であった。
玻璃湖そのものは、湖としては中規模どころの大きさである。それでも、凛花たちが佇む湖岸から向こう岸までを見通すことはできないから、かなりの規模ではあるのだろう。
一見すると、海と間違いそうだ。
冬の真っ盛りの今、玻璃湖は凍結していた。木靴でも履いていれば、湖面を滑れるのになと、凛花は一面、氷の海と化した玻璃湖を眺めながら思う。
玻璃湖は〝幻の湖〟と呼ばれるほど、不思議な湖だ。冬に凍るといっても、湖面すべてが凍結するわけではなく、ほんの一部が凍るにすぎない。とはいえども、凛花の立つ湖畔からは氷しか見えないゆえ、一部というのも額面どおりに受け取ってはいけないのだと判る。
玻璃湖が何故、〝幻の湖〟と呼ばれるのかは、その特異性にあった。この湖は海水と淡水、場所によって水質が異なっているのだ。
二つが微妙に入り混じっている部分もあれば、殆ど海水、淡水に近い部分もそれぞれある。
ゆえに、海で採れるはずの栄螺や鮑、海苔、昆布、その他、諸々の魚などが採れる。むろん、捕れる魚は淡水魚、汽水魚(塩分と淡水の混じった湖を汽水湖と呼ぶ)、海水魚と種類も雑多で豊富である。更に、白蝶貝や真珠の収穫もあった。全く異なる二つの性質を合わせ持つことにより、この湖は昔から多大な恵みを人々にもたらしてきた。
この地方は元々、土地が荒れ痩せているため、農耕には適していない。しかし、玻璃湖がもたらす様々な恵みにより、民は生きてこられたのだ。その名の由来は、春から夏にかけて、湖が陽光を受けて煌めく光景が信じられないほど美しく、玻璃(ガラス)のように見えるからと謂われているが、つまびらかではない。
湖は山茶花村を抜け、北に向けて馬を四半刻ばかり駆けさせた場所にひっそりとひろがっている。周囲には人家とてなく、ただ枯れた芦原が見渡す限り続くだけだが、今は降り積もった雪が冬枯れの荒涼とした野を幻想的に飾っていた。
