山茶花(さざんか)の咲く村~男装美少女の恋~
第8章 発覚
「その人っていうのは、もしかしなくても、凛花がいつか話してた大切な友達のことだよな」
「ええ」
凛花はかすかに頷いた。
「凛花はあのときも俺に嘘をついたんだ」
凛花の眼がインスを射るように見開かれた。
「お前はあの時、俺に大切な友達だと言ったではないか。だが、現実には、友達ではなく恋人だった、―そうなんだろ」
「ごめんなさい、私―」
凛花の眼に大粒の涙が滲んだ。
「俺はそいつが憎いよ」
インスが地平線から凛花に視線を移した。
「凛花が女だてらに男に化けたのも、そいつのせい、今、こうして泣いているのも、その野郎のせいだ。どういう経緯で、そいつが死んだのかは判らない。だが、男なら、惚れた女を泣かせるべきじゃない。お前のことだ、もう十分、傷つき苦しんだはずだ。良い加減、そいつはお前を解放してやっても良いだろう!」
「文龍さまを悪く言わないで。私が悪いの、私が悪いのよ。私が敵の誘いに乗らなければ、文龍さまは死ななかった。人質に取られた私が気がかりだった文龍さまは、存分に闘えなかったの。だから、生命を落としたの」
凛花の眼から溢れ出した涙は次々と頬をすべり落ちた。
「もし、俺がお前の惚れた男と同じ立場でも、とっくに許してるよ。生命張ってまで助けた女が今も自分が原因でそんな風に傷ついたまま絶望の中で生きてきたと知れば、それこそ男の方も浮かばれないだろう」
それでもなお、すすり泣く凛花を引き寄せ、インスは耳許で囁いた。
「もう良い、もう良いから。泣くなよ、なっ、頼むから泣かないでくれ。お前が泣くと、俺までどうしたら良いか途方に暮れてしまうではないか」
懐かしい科白に、余計に泣けてくる。
―そなたには笑顔が似合う。いつも笑っていてくれ。
―そなたが泣くと、私はどうふるまえば良いか判らなくなる。良い歳をした大人でも、ほら、このとおり、女を慰める言葉一つ、口にできぬ無粋な男だ。
婚儀の日取りを決めたあの夜、確かに文龍も似たような科白を言ったのだ―。
「ええ」
凛花はかすかに頷いた。
「凛花はあのときも俺に嘘をついたんだ」
凛花の眼がインスを射るように見開かれた。
「お前はあの時、俺に大切な友達だと言ったではないか。だが、現実には、友達ではなく恋人だった、―そうなんだろ」
「ごめんなさい、私―」
凛花の眼に大粒の涙が滲んだ。
「俺はそいつが憎いよ」
インスが地平線から凛花に視線を移した。
「凛花が女だてらに男に化けたのも、そいつのせい、今、こうして泣いているのも、その野郎のせいだ。どういう経緯で、そいつが死んだのかは判らない。だが、男なら、惚れた女を泣かせるべきじゃない。お前のことだ、もう十分、傷つき苦しんだはずだ。良い加減、そいつはお前を解放してやっても良いだろう!」
「文龍さまを悪く言わないで。私が悪いの、私が悪いのよ。私が敵の誘いに乗らなければ、文龍さまは死ななかった。人質に取られた私が気がかりだった文龍さまは、存分に闘えなかったの。だから、生命を落としたの」
凛花の眼から溢れ出した涙は次々と頬をすべり落ちた。
「もし、俺がお前の惚れた男と同じ立場でも、とっくに許してるよ。生命張ってまで助けた女が今も自分が原因でそんな風に傷ついたまま絶望の中で生きてきたと知れば、それこそ男の方も浮かばれないだろう」
それでもなお、すすり泣く凛花を引き寄せ、インスは耳許で囁いた。
「もう良い、もう良いから。泣くなよ、なっ、頼むから泣かないでくれ。お前が泣くと、俺までどうしたら良いか途方に暮れてしまうではないか」
懐かしい科白に、余計に泣けてくる。
―そなたには笑顔が似合う。いつも笑っていてくれ。
―そなたが泣くと、私はどうふるまえば良いか判らなくなる。良い歳をした大人でも、ほら、このとおり、女を慰める言葉一つ、口にできぬ無粋な男だ。
婚儀の日取りを決めたあの夜、確かに文龍も似たような科白を言ったのだ―。