
山茶花(さざんか)の咲く村~男装美少女の恋~
第9章 生まれ変わる瞬間
あれから一度も素人娘を抱いていない。仕方がないゆえ、町の妓楼まで出かけていって憂さを晴らしているが、そろそろ我慢も限界というところだ。
「県監さまのお通りだ。道を空けて、脇に寄れ」
尚凞の乗った輿を担ぐ家僕たちの前、大声を上げながら趙家の執事が歩いてゆく。両班や王、王族といった特権階級が町を行く際は、こんな風に先触れが歩き、主人は輿や馬に乗って、ふんぞり返って通行するのだ。
―ああ、それにしても真冬だというのに、何で、こんなに汗が出るのだ。
尚凞は懐から手巾を取り出し、苛立たしげに額を拭った。季節を問わず大量の汗をかくため、いつもじっとりと身体は湿っていて、不快極まりない。
この嫌な汗を白くすべらかな若い女の柔肌で吸い取って貰えたらのぅ。と、淫らな想像をしながら、周囲を落ち尽きない視線で眺め回す。
しかし、案の定、尚凞の行く手―道の両側に寄って頭を下げている中で女といえば、どれも中年増かそれ以上の歳の食指も動かないような女ばかりである。
尚凞が盛大な溜息を洩らした時、ふいに突風が吹き抜けた。彼の手から手巾が離れ、風にのって舞い上がった。
「おおっ」
いささか手巾一枚で大仰すぎる反応だが、尚凞は大慌てで手を伸ばす。
と、尚凞は眼を瞠った。
すぐ前方に、美しい少女が佇み、腕を伸ばしている。一杯に背伸びしているため、チョゴリの袖が捲れ、白い膚が惜しげもなく露出していた。
尚凞は衆人環視の中であることも忘れ果て、少女の白い膚を惚(ほう)けたように眺めた。
―これぞ、儂が探し求めていた女だ。
その瞬間、尚凞は決めた。今夜の伽の相手は、この娘にしよう。
かなり自分勝手な決定だが、彼はいつもこのやり方で気に入った女をモノにしてきた。相手の意思などまるで無頓着なのは常のことだ。
手巾は風にたなびきながら舞い、美少女の手に落ちる。
少女は掴んだ手巾を両手で捧げ持つようにして前へと進み出た。尚凞が顎をしゃくると、輿が止まる。
「県監さまのお通りだ。道を空けて、脇に寄れ」
尚凞の乗った輿を担ぐ家僕たちの前、大声を上げながら趙家の執事が歩いてゆく。両班や王、王族といった特権階級が町を行く際は、こんな風に先触れが歩き、主人は輿や馬に乗って、ふんぞり返って通行するのだ。
―ああ、それにしても真冬だというのに、何で、こんなに汗が出るのだ。
尚凞は懐から手巾を取り出し、苛立たしげに額を拭った。季節を問わず大量の汗をかくため、いつもじっとりと身体は湿っていて、不快極まりない。
この嫌な汗を白くすべらかな若い女の柔肌で吸い取って貰えたらのぅ。と、淫らな想像をしながら、周囲を落ち尽きない視線で眺め回す。
しかし、案の定、尚凞の行く手―道の両側に寄って頭を下げている中で女といえば、どれも中年増かそれ以上の歳の食指も動かないような女ばかりである。
尚凞が盛大な溜息を洩らした時、ふいに突風が吹き抜けた。彼の手から手巾が離れ、風にのって舞い上がった。
「おおっ」
いささか手巾一枚で大仰すぎる反応だが、尚凞は大慌てで手を伸ばす。
と、尚凞は眼を瞠った。
すぐ前方に、美しい少女が佇み、腕を伸ばしている。一杯に背伸びしているため、チョゴリの袖が捲れ、白い膚が惜しげもなく露出していた。
尚凞は衆人環視の中であることも忘れ果て、少女の白い膚を惚(ほう)けたように眺めた。
―これぞ、儂が探し求めていた女だ。
その瞬間、尚凞は決めた。今夜の伽の相手は、この娘にしよう。
かなり自分勝手な決定だが、彼はいつもこのやり方で気に入った女をモノにしてきた。相手の意思などまるで無頓着なのは常のことだ。
手巾は風にたなびきながら舞い、美少女の手に落ちる。
少女は掴んだ手巾を両手で捧げ持つようにして前へと進み出た。尚凞が顎をしゃくると、輿が止まる。
