山茶花(さざんか)の咲く村~男装美少女の恋~
第2章 もみじあおいの庭
ナヨンは笑いながら応えた。
「とてもお似合いですよ」
「えっ、ええ。ああ、そうね。首飾りのことだったわね」
しどろもどろの凛花に、ナヨンは笑いを堪えられないといった風だ。
「お嬢さまが今、何をお考えになっていたか、当ててみましょうか?」
「良いわよ。別に謎解きをしているわけではないのだから。それよりも、本当に今日の衣装にこの首飾りで良い?」
夕食後、凛花は普段着から晴れ着に着替えている。萌葱色のチョゴリに光沢が美しいやや抑え目の紅色のチマはふんわりとひろがって、さながら花が開いたようだ。チマには全体的に花が刺繍されていて、凛花の持っている数少ない衣装の中では、最も豪華でお気に入りのものだった。
「チマと首飾りの色が同じですから、よく映えますわ。まるで、あつらえたようにお似合いです」
ナヨンはにっこりと微笑み。
「いつもお美しいお嬢さまが今夜は一段とお美しく見えます。やはり、皇氏の若さまがいらっしゃるせいでしょうか?」
「いやね。人をからかうものではないわ」
凛花は紅くなった頬を更に染め、プイと横を向いた。
少し早めの夕餉を終えてからというもの、凛花はずっと鏡の前に座り込んでいるのだ。時間をかけて自分で化粧を終えたのは良いけれど、角度を変えては幾度も念入りに検め、ここの化粧が駄目、ここの部分が足りないと零しては、せっせと直している。
鏡を覗き込んで恋人の訪れに胸をときめかせるその姿は、まさに恋する少女そのものだ。その様子をナヨンはずっと微笑ましく見つめていた。
ナヨンはけして派手な美人ではないが、優しい気性で働き者の彼女は、同じこの屋敷に仕える若い家僕たちの憧れの的でもある。既に何度となく執事の息子からも求愛されているものの、ナヨン自身は我が身の幸せよりも、亡き母の遺言どおり、まずはお嬢さまの幸せを見届ける方が先だった。
口には出せないけれど、ナヨンにとって、凛花は実の妹のような大切な存在であった。
凛花がもう一度、鏡を覗いた。もう、これで何度目になるか判らない。ナヨンの顔に思わず微笑が広がった。
「とてもお似合いですよ」
「えっ、ええ。ああ、そうね。首飾りのことだったわね」
しどろもどろの凛花に、ナヨンは笑いを堪えられないといった風だ。
「お嬢さまが今、何をお考えになっていたか、当ててみましょうか?」
「良いわよ。別に謎解きをしているわけではないのだから。それよりも、本当に今日の衣装にこの首飾りで良い?」
夕食後、凛花は普段着から晴れ着に着替えている。萌葱色のチョゴリに光沢が美しいやや抑え目の紅色のチマはふんわりとひろがって、さながら花が開いたようだ。チマには全体的に花が刺繍されていて、凛花の持っている数少ない衣装の中では、最も豪華でお気に入りのものだった。
「チマと首飾りの色が同じですから、よく映えますわ。まるで、あつらえたようにお似合いです」
ナヨンはにっこりと微笑み。
「いつもお美しいお嬢さまが今夜は一段とお美しく見えます。やはり、皇氏の若さまがいらっしゃるせいでしょうか?」
「いやね。人をからかうものではないわ」
凛花は紅くなった頬を更に染め、プイと横を向いた。
少し早めの夕餉を終えてからというもの、凛花はずっと鏡の前に座り込んでいるのだ。時間をかけて自分で化粧を終えたのは良いけれど、角度を変えては幾度も念入りに検め、ここの化粧が駄目、ここの部分が足りないと零しては、せっせと直している。
鏡を覗き込んで恋人の訪れに胸をときめかせるその姿は、まさに恋する少女そのものだ。その様子をナヨンはずっと微笑ましく見つめていた。
ナヨンはけして派手な美人ではないが、優しい気性で働き者の彼女は、同じこの屋敷に仕える若い家僕たちの憧れの的でもある。既に何度となく執事の息子からも求愛されているものの、ナヨン自身は我が身の幸せよりも、亡き母の遺言どおり、まずはお嬢さまの幸せを見届ける方が先だった。
口には出せないけれど、ナヨンにとって、凛花は実の妹のような大切な存在であった。
凛花がもう一度、鏡を覗いた。もう、これで何度目になるか判らない。ナヨンの顔に思わず微笑が広がった。