山茶花(さざんか)の咲く村~男装美少女の恋~
第5章 旅立ち
この月華楼の女将明月(ミヨンオル)は既に三十路を越えた年増だが、あだな美貌は一向に衰えていない。面倒見の良い気性は、妖艶な外見には似合わず、存外にさっぱりしていた。
酒場の女将は、かつて月華楼で客を取っていた妓生である。年季が明けて、晴れて自由の身となり、自分の見世を持ったのだ。そのときも明月が前祝いとして見世を出す資金の半分を気前よく出してくれたという。
酒場の女将は、凛花への恩を忘れておらず、明月への橋渡しをしてくれた。また、明月も深い事情は一切訊ねることなく、凛花の申し出を受け入れ協力してくれたのである。
凛花は妓生風に編んだ髪を高々と頭に結い上げ、幾つもの玉の簪を挿し、華やかな色合いのチマチョゴリを纏っていた。淡い水色のチョゴリと艶やかな牡丹色のチマを纏ったその姿は、どこから見ても妓生の色香を漂わせている。
客の問いかけに、凛花はそっと頷いた。
「まだ妓生となって日が浅いと聞いたが、やはり、女将の言葉に嘘はなさそうだな」
男―朴直善はヤニ下がった顔で、凛花の手を嫌らしく撫で回している。思わず手を引っこ抜きたいのを堪え、一旦、もう一方の手を直善の手に重ねてから、やんわりと男の手を放した。
酒場の女将は、かつて月華楼で客を取っていた妓生である。年季が明けて、晴れて自由の身となり、自分の見世を持ったのだ。そのときも明月が前祝いとして見世を出す資金の半分を気前よく出してくれたという。
酒場の女将は、凛花への恩を忘れておらず、明月への橋渡しをしてくれた。また、明月も深い事情は一切訊ねることなく、凛花の申し出を受け入れ協力してくれたのである。
凛花は妓生風に編んだ髪を高々と頭に結い上げ、幾つもの玉の簪を挿し、華やかな色合いのチマチョゴリを纏っていた。淡い水色のチョゴリと艶やかな牡丹色のチマを纏ったその姿は、どこから見ても妓生の色香を漂わせている。
客の問いかけに、凛花はそっと頷いた。
「まだ妓生となって日が浅いと聞いたが、やはり、女将の言葉に嘘はなさそうだな」
男―朴直善はヤニ下がった顔で、凛花の手を嫌らしく撫で回している。思わず手を引っこ抜きたいのを堪え、一旦、もう一方の手を直善の手に重ねてから、やんわりと男の手を放した。