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第6章 case3 【貴方ニ効果的ナ"復シュウ"ヲ】 2

「・・・い、痛い」

あまりの力の強さに、思わず呟けば。

「あ、悪い」

少し我に返ったのか、腕を緩めてくれたけど、抱き締められ逃げられない状態が続いていることには変わりない。

・・・さっき、全く斎の術が効いていないみたいな事を言っていたけど、実は無効化は出来てはいない様な気がする。

だって、さっきまで怖かった筈なのに、恐怖は消えている。

・・・困惑の方が強い、からかも知れないけど。

斎の術が私に効き辛い理由は解らない。斎が私に執着する理由も・・・解らない。

多分、まだ、解らない事、多いかも。

混乱と困惑で、何となく彷徨う目線。そして、縋っているかのような斎の腕の中で。

「・・・解らない」

ぽつり、意識せず口から飛び出した言葉に、

「まだ解らなくていい。まだ知らなくていい。そして考えるのを、放棄すればいい。考えたって答えは出ないし、どこにも逃げられる術は、無い」

繰り返される言葉と同時に、思考の迷路に迷っていた間に下を向いていたらしく、上向かされる、顔。

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