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第9章 case4 【私ガ一番デアリタイ】 2

「ヒトは思い込みが激しいからね。ま、三浦あずさ、もだけど」

名前を口にした斎の声は、愛しい彼女に対するもの、とは違い、苦々しいものを含んでいる。

けど、それ以上斎が彼女をどう思ってるかに考えは及ばない。何故なら、生徒会長の名前を斎が口にした途端、私自身に苦い気持ちが過ったから。

「斎の、彼女でしょ?」

「彼女は絢乃でしょ?」

・・・今更?な会話の間に、斎の指はいつの間にか喉から離れ、私の上半身をゆっくりと優しく包む。優しい、抱擁。

「・・・会わなかったのに?」

「会って無くても、別れた心算は無いし」

「別れたかったのは、斎でしょう?」

「別れたいって言った記憶ないけど?」

確かに言われてないけれど、も。だって自然消滅・・・。

「避けてたでしょ」

「避けていたのは、絢乃でしょ」

・・・何なのこの不毛な会話は。だって、だってだって、あの状況でどう・・・。

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