テキストサイズ

contract

第10章 case5 【私ヲ見テ】 1

抜き取った封筒は、くしゃくしゃに丸められる。

丸めながら外に出て、校庭の樹がいっぱいある方向に向かって、ポイッと投げたものだから、一気に行方が分からなくなる。

「何してッ」

慌てて取りに行こうとする私の腕をグイッと引く。

「あれは忘れろ」

「気になるッ」

「どうにかしてやるから、忘れろ」

ドウニカシテヤルカラ?

耳に入ってきた言葉に、我が耳を疑う。聞き間違いかと思ったから。

「・・・どうにか、してくれるの?」

「ああ」

どうやら聞き間違いではなかったらしい。ただ、何でいきなりそんな心境になった・・・の?

「何の気まぐれで・・・」

思わず心の声まで口に出た、が、斎はスルーしてくれた。

「ただし、金本悠里宛ての手紙は当分律儀に受け取り続けろ。そうすれば、実害が及ぶ可能性は少なくなる。後、さっきの手紙は誰にも言うな」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ