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第10章 case5 【私ヲ見テ】 1

走り出した悠里ちゃんを捕まえる岩倉君。その姿は、既に羽交い絞めと言ってもいいほど。・・・もう見ていられない。

「悠里ちゃんに、何やってるのよっ!!」

大声で叫ぶと、岩倉君の腕がビックリして緩んだらしい。

「絢乃ちゃん!!」

「逃げるよっ!!」

悠里ちゃんは私の姿を見て、逃げてくる。私も岩倉君の方を見る余裕ないまま、皆のいる教室に向かって必死に走った。

教室に戻ると、残っていたクラスメイトが、私たちを見てきょとんとしていた。猛ダッシュで走ったから、息が上がって仕方がない。

そして彼は追いかけては、来なかったみたい。悠里ちゃんと私の足音しか・・・しなかったから。

「い、岩倉、君、怪し・・・っ」

荒い息をしながらなので、ゼイゼイと呼吸の合間の会話は苦しい。

「今、しゃべらな、くて、良いって」

そういう悠里ちゃんも相当苦しそう。

「学校の中、走って楽しいか?」

まだ残っていた斎藤君がこっちに声をかける。

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